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(医)竹川整形外科クリニック 香川県丸亀市飯山町 運動器エコー 運動器超音波

整形外科治療最前線

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整形外科治療最前線

骨粗鬆症

1はじめに

骨粗鬆症は命に関係ない病気と思っていませんか?
実は
骨粗鬆症は悪性腫瘍と同様に、生命を脅かす病気なのです.

悪性腫瘍の例として乳がんを取り上げます。
全国乳がん患者登録報告第29号によると、乳がんのステージは4つあり
10年生存率は
ステージ1(腫瘍が2cm以下)が89%
ステージ3B(皮膚に出ている)が52%です。

したがって乳がんは早期発見、早期治療が必要ということになります。

次に
高齢者の集団で10年生存率を調査したところ、
ある要因が無ければ86%
1つだと76%
2つだと50%
という病態があります。

何でしょうか。

正解は骨粗鬆症による椎体骨折(圧迫骨折)です。

椎体骨折数の10年生存率は
 ゼロ    86
 1個    76
 2個以上  50 %
なのです。

つまり対象の年齢は違いますが、椎体骨折2個あれば、乳がんのステージ3Bと同程度の生存率になるのです。
これは椎体骨折による円背(背中が丸くなる)のため、胸部・腹部臓器を圧迫し、高齢者の臓器機能障害・低下を来たすためです。

別のデータでは、椎体骨折の方が発症年齢が若く55歳頃から増加し、大腿骨近位部骨折は75歳頃から増加する。椎体骨折があると死亡率は8.6倍、大腿骨近位部骨折があると死亡率は6.7倍になる、とのことです。

従って、骨粗鬆症を見つけて骨折が無い時に治療するのが理想ですが、少なくとも最初の骨折の際に治療をスタートで予防する必要があります。2つ目の骨折で10年生存率は一気に半分になるからです。
これをstop at one(1回目で止めよう)と表現します。

当然ながら
骨粗鬆症の治療は、乳がんの治療ほど体に負担になりません。

2治療効果と副作用

治療は効果が上がり、副作用が少ないほど良いということになります。

そこで治療効果の概略を見てみましょう。
数字は5%刻みで母集団、対象部位、文献により異なります。

骨粗鬆症治療薬の椎体骨折予防効果
 ラロキシフェン  35
 アレンドロネート 45
 ミノドロン酸   60
 イバンドロネート 60
 デノスマブ    70
 テリパラチド   80%抑制

 ある時期での最大骨折予防効果を示しています。
 骨折予防効果の持続期間もまちまちですので、単純にこの数字だけで薬の優劣が決まるわけではありません。
 どの薬も半年位から骨折予防効果が出始めます。

一方
どのような薬にも必ず副作用があります。一般的に肝障害、腎障害、薬疹、消化器症状などは全ての薬に出現する可能性があります。
骨粗鬆症治療薬で特殊な副作用は、主にビスフォスホネート(以下ビスホス)で出現する顎骨壊死(BRONJ)と、非定型大腿骨骨折です。

治療効果と副作用の頻度の比較をした研究もあります。ビスホスの一種であるアレンドロネートを1000人に10年間投与したら、椎体骨折250例、大腿骨近位部骨折44例、非椎体骨折96例を防止。一方顎骨壊死は10年で1~2例、非定型大腿骨骨折は5例発症とメリットがデメリットを大きく上回ります。

顎骨壊死の頻度をまとめると、おおよそビスホスで0.01~0.03%、デノスマブで0.1%(骨粗鬆症用の使用量である60mgを6ヶ月に1回投与の場合)です。ビスホス静注では0.8~1.2%発症との報告があり、一見ビスホス静注は副作用が多いようですが、これはゾレドロン酸静注であり、日本では骨粗鬆症に対しては適応がありません。現在日本で骨粗鬆症に対するビスホス静注はイバンドロン酸であり、顎骨壊死は100万例中2例という報告があります。

3治療薬各論

主な薬の概略を記載します。

1.骨折予防効果が最大なのはテリパラチドです。
インスリンのように毎日皮下注射するタイプは最高2年、毎週皮下注射するタイプは最高1年6ヶ月が保険適応です。

高度の骨粗鬆症で、治療に対する理解力があり、活動性が高く、骨折予防に対する意欲の高い人に最も良い適応があります。

欠点としてはコストで、フォルテオを例に挙げると1割負担でも毎月6000円以上追加負担が必要となります。

インスリンのように毎日皮下注射するフォルテオの場合、家族の理解も必要です。

2.ビスホスの中で効果が高く、副作用が少ないのはイバンドロネートです。
利点としてはビスホスの中で骨折予防効果がトップレベルで6ヶ月で5%の椎体骨密度増加と立ち上がりが早い。欧米では顎骨壊死が100万例中2例*、非定型大腿骨骨折が100万例中0.3例と極端に少ないのが特徴です。
*Drug Safety and Risk Management Advisory Committee,August 2011
3.当院で一番処方が多いのはエルデカルシトールです。
ビタミンDが不足していると、ビスホスの効果も発揮されず、骨粗鬆症の場合には先ずビタミンDの処方が望ましいようです。エルデカルシトールは従来のビタミンDとの比較で25%椎体骨折抑制します。ビタミンDは脳や筋肉の代謝にも関与し転倒防止効果等により前腕骨折を71%抑制します。欠点としては高齢者で腎機能低下がある場合には高カルシウム血症をきたしやすい印象があります。

4.世間で一番処方されているのがビスホスと思われます。
利点としては毎日、週1回、月1回服用と多彩な服用方法があり、効果も安定していいます。骨吸収を抑える為、血管への石灰沈着が減り、2年投与で心筋梗塞の死亡率が数分の1になる効果もあります。欠点としては顎骨壊死が0.01~0.03%あり、歯科の先生には相当嫌われているようです。

5.椎体骨折初期にはカルシトニンを使います。35%椎体骨折抑制し、椎体骨折の疼痛抑制に効果があります。

6.新薬ではデノスマブ(抗RANKLモノクローナル抗体)があります。利点としては半年に1回の皮下注射でテリパラチドに次ぐ効果があります。欠点としてはビスホス同様の副作用があり、顎骨壊死が0.1%と比較的高頻度のようです。

高齢者で腎機能低下の場合等にはエルデカルシトールを減量して投与したり、活性型ビタミンD等で治療することもあります。

骨代謝マーカーの値にもよりますが、個人的な推奨治療は
A.高度の骨粗鬆症の場合で、費用と手間をいとわなければテリパラチドです。

B.低リスク・高ベネフィットな治療は、エルデカルシトールを初期に投与し、ビタミンDを充足してからイバンドロネートを併用するとAPR(急性期反応)の予防になり副作用は一層少なくなります。

C.新鮮椎体骨折の場合は外固定にエカテニンを使用し、骨癒合不良ならA.、骨融合良好ならB.に変更します。

D.他にも様々な治療法がありますが、日本人は血中ビタミンD濃度が低い人が多く、少なくともビタミンDの内服による補充療法は必要と思われます。

4まとめ

骨粗鬆症の治療を何故行うのか。
それは寿命、特に健康寿命を伸ばすためです。

骨粗鬆症で生じる椎体骨折数がゼロの人の10年生存率は86%ですが、
最初の椎体骨折で来院されると76%、
2個以上の椎体骨折では50%にまで低下してしまいます。

健康で長生きできるよう
骨粗鬆症の治療を整形外科でちゃんと受けみませんか。

御注意

以上は近大宗円(円は旧字体)先生、長大伊東先生等、大家の先生方の講演や文献等を元に、記載時点(2014年2月)での私見を述べたものです。あくまで骨粗鬆症全般に対しての私見であり、個別の症例に当てはまるものではなく、臨床現場に於ける各自の治療方針に異を唱えたり、ましてや係争等に引用する等は、厳に謹んで頂きますよう御願いいたします。

内服薬

セレコックス(セレコキシブ)

*NSAIDS(消炎鎮痛剤)のうち、最も副作用の少ない内服薬です。

トラムセット配合錠(トラマドール/アセトアミノフェン)

*痛みが通常のNSAIDS(消炎鎮痛剤)で抑えきれない非がん性慢性疼痛に処方します。

トラマールカプセル(トラマドール塩酸塩製剤)

*痛みが通常のNSAIDS(消炎鎮痛剤)で抑えきれない非がん性慢性疼痛に処方します。2013年06月14日慢性疼痛に適応追加。

カロナール(アセトアミノフェン)

*古い薬ですが成人に対する処方が1日最大1500mgであったのが、適応病名によっては4000mgまで投与できるようになりました。
*適応の無い病名や後発品もあります。

リリカ(プレガバリン)

*普通の痛みでなく痺れ、違和感、放散痛(痛みが別のところに走る)等がある場合、神経障害性疼痛という神経の過敏状態になっていることがあります。通常のNSAIDS(消炎鎮痛剤)では効果が低く、リリカが著効することがあります。
*リリカ対する感受性は個人差が大きいため、当院では少量から少しずつ増量し、症状が改善したら少しずつ減量します。

ノイロトロピン

*歴史のある薬ですが、NSAIDSと異なり下行性抑制系を活性化して疼痛を抑制するという機序が解ってきました。

外用薬

ノルスパンテープ(ブプレノルフィン)

*非オピオイド鎮痛剤では十分な疼痛管理ができない変形性関節症、腰痛症に伴う慢性疼痛を、7日間の貼付でコントロールする薬です。

注射薬

ヒアルロン酸関注

*「ヒアルロン酸?主に膝関節の湿潤と衝撃緩和、つまり膝関節を滑らかに動かす作用がある薬でしょ」と御存知の方も多いと思います。

*ヒアルロン酸の最新の知見として、
「変形性膝関節症では
関節が破壊されて生成されるマトリカイン、
壊れたところを掃除するマクロファージが出すサイトカイン、
これらの物質で膝関節の破壊進行が一層進むという悪循環が生じる。
この悪循環をヒアルロン酸が抑制する。」
ということが
神戸市立医療センター中央市民病院(旧天理大学)の安田理先生の研究で明らかになりました。

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